研究概要 |
イネのレトロトランスポゾンの研究はこの2年間で大きく進み,3種の新規レトロトランスポゾン,すなわちcopia型のRIREI,gypsy型のRIRE2,RIRE3およびRIRE8を同定した.このうちgypsy型の種はさらにRIRE2ファミリーとRIRE3-RIRE8ファミリーの2群に大別されることを,それらのRTase(逆転写酵素)遺伝子の相同性から明らかにした.これらのレトロトランスポゾンはその高いコピー数を反映して,ゲノム上で高頻度で「入れ子構造」をなして存在する.これらの結果はすでに2報の論文に発表し,さらに2報の論文として準備中である.さらにRIRE3のhomologueが単子葉植物にも双子葉植物にもubiquitousに存在し,水平伝播によって拡散したことが示唆された.また,これまで植物では殆ど報告のなかったLINEエレメント(Non-LTR型レトロトランスポゾン)を被子植物から裸子植物,苔類に至るまで系統的に単離することに成功した.それらのLINEのエンドヌクレアーゼ領域の部分塩基配列の解析から,これらのエレメントは,レトロトランスポゾンとは異なって,垂直伝播をする因子であることが示唆された(論文投稿中).またイネを培養細胞化,及びエリシター処理をしたときに,RIRE2の発現が誘導されるという予備的な結果(全RNAに対するノーザンブロット法)を得ている. ここにあげたレトロトランスポゾンおよびLINEの転移活性の研究は是非とも今後続けて取り組みたい課題である.
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