研究概要 |
バクテリオファージφ29DNAは両5'末端に分子量30KDのタンパク質を共有結合したDNA・タンパク質複合体として抽出精製される。この複合体の電子顕微鏡像としての視覚化を指標にして,種々のDNA展開剤の効果,展開法を検討した。チトクロームCを標準の展開剤として,カチオニック ディタ-ジェント[beuzyldimethylalkylammonium chroride(BAC),cetylpyridium chlride(Cp)]および非イオン性ディタ-ジェント[2,4,6-Tri(demethyl-aminomethyl)phenol,(DMP-30)]を用いた。 マイカの新開裂面にカーボン膜を蒸着した膜面にDNAを上記展開剤とを混合した溶液を直接吸着する方法と,DNA・展開剤混液を純水表面上に展開する方法を比較した。前者の方法は、原子間力顕微鏡観察に利用される方法であるが,DNA・蛋白質複合体がカーボン膜に吸着した後,カーボン膜をマイカからはく離後、透過型電顕試料として利用することに成功した。後者の水面上の展開法は,DNA溶液のイオン濃度および温度により,影響を受け易く,DNA像がしばしばゆがめられる(キンク状)ことを経験した.しかしながら,最適条件下では,φ29DNA両末端に結合したタンパク質像を観察することに成功した.さらに,制限酵素Hind III処理されたDNA断片の末端にHind IIIタンパク質と考えられる構造を明らにすることが出来た。 京大・ウイスル研・和田助教授との共同研究による大腸菌陰性因子F'上のイチロンにRepE54タンパク質が結合した結果,生じると考えられるロリ-ポップ構造を捉えることに成功した。この構造をディタ-ジェント展開法により,RepE45結合像の視覚化を試みている。
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