研究概要 |
1.マツノマダラカミキリの個体群ダイナミクスとマツ枯れ伝播に関する数理的研究-マツ枯れの流行は基本的にはマツとマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの三者の相互作用を介して行われるので、流行の推移は三者の個体群動態により規定されているといえる.富樫(1989)によって行われた石川県の砂丘地におけるクロマツ林で起こったマツ枯れを1980-1983年間の調査データをもとに,マツ・マツノマダラカミキリおよびマツノザイセンチュウの相互作用を取り入れた数理モデルをつくり,これを解析することにより,マツ枯れの流行の長期変動の予測を行った.また,マツノマダラカミキリの駆除によりマツ枯れの伝播がどのように制御されるかを考察し,以下の結果をえた. (1).マツ枯れが流行するためにはマツの初期密度にある閾値があり,この閾値密度よりも小さいマツ密度では,いかなる初期カミキリ密度においても流行は起こらない.また,この閾値密度はカミキリの駆除率の上昇に伴って増加する. (2).流行が終焉するまでにどれだけのマツが感染するかを駆除率の関数として求めた.駆除率が1に近いと残存マツ密度は初期マツ密度に近いが,駆除率が小さくなると初期マツ密度が大きいほど,一マツ当たりの感染割合が急速に高くなる. 2.環境が人為的に分断化されている状況の中を生物が侵入したとき,それが定着して存続する条件,分布域を広げることのできる条件,ならびに,その空間的な伝播速度を求めた.とくに,環境が道路などにより帯状に分断された場合と格子状に分断された場合の2つを取り上げ,数学的解析とコンピュータシミュレーションを行うことにより,伝播速度に関する解析的な公式を導くことに成功した.
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