研究概要 |
脊椎動物嘔吐メカニズムの比較生理学的研究の一つとして、ほ乳類において有効な塩酸モルフィン等の吐剤に対する両生類の反応を調べ、両生類の嘔吐能と両生類における脳内オピオイド受容体の存否を検討した。材料として、無尾類であるアフリカツメガエル、ツチガエル、ニオンアマガエル、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル、有尾類としてイモリを用いた。無尾類では、ドパミン作動性薬物である塩酸アポモルフィンの背リンパ嚢注射に対して嘔吐しやすい種とそうでない種がある。有尾類イモリにおいては、塩酸アポモルフィンは無効である。他方、オピオイド受容体を刺激する塩酸モルフィンの腹腔内注射はカエル、イモリいずれにおいても有効な刺激とはならなかった。なお硫酸銅による胃刺激は、無尾類、有尾類をとわず嘔吐を引き起こす。ほ乳類の嘔吐においては、延髄最後野に存在する化学受容器引き金帯(CTZ,chemoreceptor trigger zone)が重要な化学刺激受容部位として働いている。ここには、少なくともドパミン系、セロトニン系、オピオイド系の3種の受容体が存在すると考えられている。無尾類、有尾類両者を含めて、塩酸アポモルフィンの有効性に種による差のあることは、ドパミン系受容体の発達に両生類で種間差があることを示唆している。他方、イヌなどほ乳類においては強力な吐剤である塩酸モルフィンが無尾類、有尾類いずれにおいても有効でなかった。両生類においてはオピオイド受容体の発達が劣ると推察される。
|