研究概要 |
本研究は、電位依存性K^+チャネルが示すゲート機構の内、不活性化と呼ばれる現象に焦点を絞って、その分子機構を明らかにしていくことを目的として行ったものである。この目的のために、軟体動物アメフラシの中枢神経系より遺伝子クローニングされた電位依存性K^+チャネルのうち、顕著な不活性化を示すaKvl.laと全く不活性化を示さないaKv5.1の性質を、アフリカツメガエル卵母細胞をチャネルの発現系とし、パッチクランプ法を用いる事により解析した。aKvl. laでは、チャネルのアミノ末端構造によるチャネル孔の閉塞による不活性化(N型不活性化)により、チャネルが示す不活性化が関与する現象の大部分が説明可能であると考えられていた。一方、このチャネルのアミノ末端欠失変異体(ΔN)は、全くN型不活性化を示さないが、条件によっては性質の異なる不活性化(C型不活性化)を示す事が明らかになった。そこで、このチャネルが示す特徴的な現象の一つである蓄積的不活性化においてN型、C型不活性化の関与を探るために、種々のイオン環境下や薬物の存在下において、野性型aKvl. laとΔNでみられる蓄積的不活性化を比較検討した。その結果、パルス頻度に依存した蓄積的不活性化は、N型不活性化とそれに引き続くC型不活性化によることが示唆された(Furukawa and Takahashi,印刷中)。また、aKvl. laの不活性化過程は、チャネルの酸化還元状態に依存する事なども示唆された。aKv5.1チャネルのイオン透過性を明らかにするために、種々の一価陽イオンのうち、ただ一種類の一価陽イオンのみを含む外液中で、チャネル電流の逆転電位の解析を行った。その結果、調べた一価陽イオンに対するaKv5.1チャネルのイオン選択性は、K^+、Rb^+、NH_4^+、Cs^+、Na^+の順であった(第67回日本動物学会にて発表)。現在、不活性化過程に必須の分子構造を探るために、aKvl. laとaKv5.1のキメラ作成を進めているところである。
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