研究概要 |
フォスファーゲンキナーゼ(PK)はリン酸基転移酵素の一種であり,ATPのγ-リン酸基を特異的基質が持つグアニド基へ可逆的に転移させ,ADPと高エネルギーリン酸化合物であるホスファーゲンを生産する.PKとしては現在7種類が知られており,それらはクレアチンキナーゼ(CK),アルギニンキナーゼ(AK),グリコシアミンキナーゼ(GK),タウロシアミンキナーゼ(TK),ロンブリシンキナーゼ(LK),ヒポタウロシアミンキナーゼ(HTK),オフェリンキナーゼ(OK)である. 我々はこのような多様性を持つフォスファーゲンキナーゼの分子構造(アミノ酸配列)を解析することを主眼に研究をすすめ,その過程でフォスファーゲンキナーゼの基質認識に関わると思われる部位(GS region)をアミノ酸配列の比較から推定した.今回の研究から明らかになったアミノ酸配列は,ヒザラガイとサザエのAK(論文1),イソギンチャクの異常2ドメイン型AK(2),シマミミズのLK(3),ウバガイの異常2ドメイン型AK(4),ゴカイのへテロニ量体GK(5)である.この中でも特に注目されるのは,原始的な生物の一つであるイソギンチャクが異常2ドメイン型AKを持っていたこと,そしてこの遺伝子の重複と融合によって生じたと思われる2ドメイン鎖が軟体動物の二枚貝類にも広く分布していることが確認された点である.この事実はフォスファーゲンキナーゼの遺伝子がかなりの頻度で遺伝子の重複と融合をくり返していることの証明でもあり,現実に多様性あるフォスファーゲンキナーゼが進化してきた事実とも符合する.
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