研究概要 |
本研究は,軟体動物有肺類インドヒラマキガイのヘモグロビン(Hb)の構造解析を目的としている。本種のHbの構成単位は,ほぼ10個のドメインが直列につながったマルティドメインポリペプチド鎖である。DNA塩基配列からの全構造解析に必要なオリゴヌクレオチドプローブ(プローブ)作成のため,まずペプチドの部分アミノ酸配列決定から始めた。1.native Hbをsubtilisin処理後Sephacryl S-200ゲル濾過によりモノドメイン画分を分離し,Mono Qイオン交換カラムでさらに純化を進め,1成分に関して20残基分のN末端アミノ酸配列を決定することができた。2.全組織からmRNAを抽出し,cDNA libraryを作成した。3.N末端側から1〜11および11〜17のアミノ酸配列をもとに,2組のプローブIpglob-1,Ipglob-2を作成し,うちいずれかとベクタープライマーとを組み合わせてcDNA libraryからPCRによりHb cDNAのスクリーニングを試みた。その結果いくつかのサイズの異なるPCR産物が得られた。塩基配列を決定したところ,いずれもHbのものではなかった。4.本種Hbが同一ないし同様ドメインの繰り返し配列であることを想定してIpglob-1,Ipglob-2のそれぞれに対するantisenseプローブIpglob-1a, Ipglob-2aを作成し,プライマー組み合わせ1aと2,1と2aでPCRによるスクリーニングを試みた。その結果この方法ではPCR産物を得ることができなかった。5.ウサギ抗Hb抗体を作成し,この抗体でcDNA libraryのスクリーニングを試みたが特異的シグナルを得ることができなかった。6.今後1のsubtilisin分解ペプチドとは別に,大きな10ドメインペプチド鎖のN末端アミノ酸配列を決定し,その情報から作成したプローブにより3,4と同様にしてcDNA libraryからHb cDNAのスクリーニングを行う。
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