本研究は、半導体材料のみならず、軟X線多層膜ミラーに必要な更に密度の高い金属材料、とくに遷移金属、及びその化合物薄膜を原子層成長法にて作製することを目指すとともに、波長2-4nmの「水の窓領域」の高反射率多層膜ミラー実現の可能性を探ることを目的としている。本年度の研究実績として 1.最適材料の選定 「水の窓領域」で良好な光学定数を持つ遷移金属の一つであるMnを含むMnGaと、密度の低いAlPとの組み合わせが多層膜ミラーとして高反射率を持つことを理論計算から見いだした。 2.X線ミラーの試作 AlP/GaPの原子層成長により波長17nmのX線多層膜ミラーの作製に初めて成功し、原子層成長の有用性を明らかにした。すなわち、原子層成長法は基板表面の凹凸を平坦化し、光学的に良好な平坦な表面が実現できた。原子層単位の結晶成長により多層膜ミラーの反射波長が厳密に制御できることが明らかになった。 3.AlP原子層成長の機構解明 多層膜ミラーとなる材料のうちAlPの原子層成長の機構を、原子間力顕微鏡による観察から明らかにした。また、その機構から表面形状の制御に成功し、原子レベルで平坦な極めて優れた薄膜を作製できた。 現在、MnGaの化学気相成長を試みており、新しい金属材料の原子層成長の可能性を探査している。
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