研究概要 |
本研究では,金属と半導体,磁性と非磁性などの物質を対にした,周期膜厚数nmの多層膜の成膜過程の研究にその場観察エリプソメトリーを適用し,多層膜の合計厚さが光の侵入深さを越えた領域で観察される複素振幅反射率比の周期定常値と微細な成長モードとの相関を明らかにして,エリプソメトリーを,非晶質あるいは多結晶質のnm周期の多層膜の極微細構造の新しいモニター法として発展させることを目的とした。研究成果は,以下の2点にまとめられる. 1.Mo/Si系の軟X線多層膜について,成膜速度変動を0.1%以内に抑えて,MoとSiの厚さの比の異なる同一周期の試料を作成し,成膜中にエリプソメトリー閉曲線を観測した結果,全ての試料でMo上のSi及びSi上のMo成膜初期にシリサイド界面相が現れ,成長相は4相となった.室温基板では,界面相はそれぞれ初期の付着膜厚に換算してMoの0.15nm,及びSiの0.9nmの間だけ成長する事がわかった. 2.Au/C系の軟X線多層膜について,1と同様の測定を行った結果,エリプソメトリー閉曲線は,Mo/Si系と異なり,3相からなり,C上のAuでは界面相は見られなかった.また,Au上のCでは,約1nmの明瞭な界面相があった.これは,Auの表面の粗さをC膜が埋める過程に相当すると解釈できる. エリプソメトリーは,サブnmの超薄膜・多層膜系の成長相の高感度モニターであることが実証できた.
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