研究概要 |
近年,光ファイバ通信および光ファイバセンサ等の光ファイバシステムの研究・開発が進められている.現在,これらの光ファイバシステムにおいては主として真円シングルモードファイバが用いられている.光通信システムでは,真円ファイバを用いた際に,送受信部における光デバイスを偏波無依存化する必要があり,システムの複雑化を招いている.また伝送速度が向上するにしたがって,真円ファイバ中の偏波モード分散による伝送制限が無視できなくなってくる.光デバイスの設計を容易にし,システムの単純化および低価格化をはかるためには,伝送路に偏波保持光ファイバを用いることが有効であるが,偏波保持ファイバを用いた光通信システムに関する検討は十分に行われていないのが現状である.一方,光ファイバジャイロにおいては真円ファイバ中の偏波ゆらぎが回転角速度の検出限界を劣化させる事が知られており,偏波保持ファイバを用いることで,精度の向上が得られることが報告されている.ところで,これらの光ファイバシステムを構成する際,損失の低減およびデバイスの集積等に熱拡散コア拡大(TEC)技術がしばしば用いられるが,従来の偏波保持ファイバにTEC技術を用いた際はモードフィールドが楕円化するため,モードフィールドの拡大が容易に得られないという問題があった. そこで本研究では,伝送路に偏波保持光ファイバを用いた偏波利用WDM光伝送システムに関する基礎的な検討を行い,伝送システムの各部分における光伝送パワーおよび偏波クロストークを明らかにした.そして,実際に光パルスパターンを伝送して誤り率測定を行った.またTEC技術に適した偏波保持ファイバの設計を行い,数百m程度のファイバ系においては十分な偏波保持特性が得られ,モードフィールドを楕円化することなく大きなモードフィールド径拡大率が実現できる可能性を理論的に示した.さらにTEC技術を施した際に,ドーパント拡散による屈折率分布を考慮したモードフィールドを理論的に明らかにした.
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