研究概要 |
本研究では,近年の海陸空の移動体の測位に全面的に利用されている無線航法システムに関する陸地近傍での電磁環境問題,とりわけ身近な自然的な成因そして新たな社会問題である人工的な成因等によるLF帯電波の未解明のじょう乱に関する研究を目的とした.その結果は,次の通りである. 1. 電波応用として航海に使われてきた無線技術の歴史的な研究経過や課題,及び双曲線,衛星及びレーダ航法のそれぞれについて自然的な成因による電磁環境の問題や課題を明らかにした. 2. 巨大な人工構造物に起因するLF帯電波のじょう乱について,明石海峡大橋に代表される巨大架橋付近において,じょう乱源はつり橋を支える2本の主塔であり,静電容量が0.2μFの微小垂直ダイポールアンテナが2本並んでいるアンテナ系とみなすモデルを確立した. 3. つり橋構造の巨大架橋付近において起こる航法用LF帯電波に対する橋の両側200m程度の範囲のじょう乱に関して,RTK-GPS/OTF測位方式とロランCのハイブリットシステムを構築してじょう乱を検出する実験を行った.その結果,2本の主塔と橋の横方向の橋材を微小垂直ダイポールアンテナとする理論式モデルを導出して,このモデルからLF電波の位相じょう乱をほぼ説明した. 4. 長大な海岸線を有する海岸近傍の船上においては,海上を伝搬して陸地からの反射波が重畳したLF帯電波を受信する.その場合に,位相誤差の到来電波の入射角に対する依存性と海岸からどのくらいの距離範囲に陸地の影響が及ぶかについて数値解析した。その結果,海岸付近では,λ/(2cosθ)の周期間隔で電波の遅速が現れること.さらに,陸地の導電率と入射角θの関係から陸地の影響によって起こるLF帯電波の位相誤差を明らかにした.
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