研究概要 |
近年,離散的な問題において,その構造が動的な変化していく場合にも問題を解く必要に迫られている.静的な問題(最短路問題や施設の配置問題など)は古くからその重要性が認識され,問題の持つ離散構造を凸多面体やグラフを用いて表現し,に利用した解法が開発され,多くの有用な研究結果が得られている.最近では,交通量が時間と共に変化していくなかでの最短路問題や,故障を考慮したネットワーク,移動体通信など対象物が移動できる状況での最適施設配置問題のような動的な環境における問題が重要視されてきている.ここでの問題には,離散的な構造の変化と連続的なパラメタの変化があり,さらに離散的な構造には,幾何的情報が含まれていることが多い.そこで,本研究では幾何的情報を持つ離散構造を表現し,かつ動的な変化に対応可能なデータ構造や,それを効率的に操作するためのアルゴリズムの研究を行なってきた.あらゆる構造の変化に対応するためには,すべての場合の列挙といった組合わせ的問題が現れるが,そこには組合わせ的爆発という問題があり,一般には難しい.しかし,最近,凸多面体の端点を列挙するアルゴリズムが開発されたので,本研究ではこの手法を応用し,離散構造全体を凸多面体で表現し,列挙を行なうための手法の研究を中心として行い,離散的幾何構造の中心的役割をなし,有限要素法やコンピュータグラフィックスなどの基本的概念である三角形分割の集合に対する多面体表現やそれを列挙する効率的手法を提案した.また,動的Voronoi図とその応用,幾何情報を扱う上で必要となる不変量の計算方法などに関する研究を行った.これらの理論的結果を基に,計算機実験によってアルゴリズムの有効性を確認した.
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