研究概要 |
1.Perovic and Houghton(1992)により観察されたSi_<1-x>Ge_x/Si構造における二重転位半ループ源を,結晶成長面との交線が直交する等価な二つのすべり面上にある二個の三角形ループによってモデル化し,三角形ループの頂点間の距離を変化させて、相互作用エネルギーを計算し、次のような結果を得た。 (1)相互作用エネルギーは、三角形の頂点がほぼ一致する配置、すなわち、Perovic and Houghtonによって観察された二重転位半ループの形状において負の最小値をとり、この形状で転位核生成が起こる可能性が高い。 (2)相互作用エネルギーの全エネルギーへの効きは小さく、Perovic and Houghtonが求めた二重転位半ループに対する非常に小さな活性化エネルギーを説明するには表面エネルギーを考慮した計算を行う必要がある。 2.Hagen-Strunk増殖機構の初期段階では、直交するミスフィット転位が交点で対消減を起こし、頂点近傍のV字形転位が自由表現側へ移動する。このV字形転位に働く力を厳密に計算することにより、次のような結果を得た。 (1)Ge/GaAs構造でHagen-Strunk増殖機構が起こり得る最大の膜圧は85.8nmであり、これはMatthews-Blakesleeの臨界膜圧277nmおよびStrunk et al.(1979)が観察した増殖が起こり始めるとされる膜圧100nmより小さく、従って、Ge/GaAs構造に対してHagen-Strunk増殖機構は起こり得ない。 (2)Si_<1-x>Ge_x/Si構造でHagen-Strunk増殖機構が起こり得る最大の膜圧は、Ge濃度の全範囲においてMatthews-Blakesleeの臨界膜厚より小さく、また、この最大の膜圧はGe濃度の増加に伴って減少し、Fukuda et al.(1988)による転位密度の観察結果と照らし合わせれば、Si_<1-x>Ge_x/Si構造においてもHagen-Strunk増殖機構が働いているとは考えられず、別な増殖機構によって転位の増殖が起こっているものと推論される。
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