研究概要 |
炭素繊維強化エポキシ複合材料などの樹脂母材系材料においては,負荷の増加に伴って先に繊維が破断するため,母材靭性が材料全体の破壊挙動を支配する.このため,母材中に固体あるいは液体ゴムを分散させてハイブリッド化し,繊維破断によって生じたき裂をゴム粒子により架橋させることによって母材靭性を向上させるという試みが検討されている. 本研究においては,繊維強化ゴム変性エポキシ複合材料に対するマイクロメカニックスによるモデル化を検討した.まず最初に,エポキシ母材にゴム粒子のみが含まれる場合に対するモデル化と靭性の解析を行った.ゴム粒子によるき裂架橋領域の寸法分布は,粒子の寸法分布に依存するため,これを求めるためにステレオロジーの考え方を導入した.さらに,ゴムは非圧縮性材料であるため,これを考慮して体積不変の条件を満足する等価式を検討した.このモデルを等価介在物法を用いて解析することによって,ゴム粒子の含有率や粒子径分布が材料の靭性に及ぼす影響を明らかにした.次に,繊維を含むハイブリッド複合材料の解析を行った.モデル化に際しては,繊維の破断によって生じたき裂が母材中に進展し,ゴム粒子がこれを架橋している状態を想定した.このモデルを解析し,繊維とゴム粒子の含有率などが本材料の靭性に及ぼす影響を検討した結果,以下の知見を得た. (1)ステレオロジーの考え方を用いてゴム粒子による架橋領域の寸法分布を求めることができた.また,体積不変の条件を考慮した等価式が定式化できた. (2)繊維端から生じたき裂が母材まで進展している状態を取り扱うため,繊維端部に接するき裂領域の応力をMuraとChenのジャンプ条件から求めるとともに,母材に接するき裂領域の応力を平均相互作用応力に等しいと置き,平均的な意味でき裂面上の応力自由の条件が満足されていると考えてこれをモデル化できた.このモデルを解析し,き裂の進展条件を求めることによって靭性を評価した結果,繊維やゴム粒子の含有率やゴム粒子が増加するに従って靭性は増加することがわかった.
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