研究概要 |
実験試料として2種類の高分子材料,すなわち脆性的な材料として熱可塑性樹脂のPMMA(アクリライトS-001),また延性的な材料としてポリマーアロイの一種であるPA6/PPE/SBS樹脂を用い,き裂先端周辺における変位場を計測した.その計測手法としてモアレ干渉法を応用した.得られた変位場をき裂先端からの距離,き裂の線上からの角度の関数として表し,線形破壊理論の近似式との対応関係を調べた.また重ね合せの原理を応用して,き裂による変位場の寄与分を分離した.その変位場の寄与分に関する関数形を求め実験結果との比較検討を行った.さらに変位場の表示式を提案し,以下の結論を得た. (1)き裂先端付近でのPMMAの変位場は,線形破壊理論である程度近似することができる.しかしアロイ材では大きな差が発生した。 (2)PMMAとアロイ材の変位場の寄与分は,提案した関数形で表示することが可能である. (3)提案した変位場の表示式が、全測定領域すなわちき裂先端からの距離,き裂の線上からの角度で良く一致した. (4)すなわち提案した表示式を用いることにより,材料定数が大きく異なる高分子材料の変位場を表現できること,また局所的な応力やひずみの計算を行なうことが可能となることも明らかにした. (5)新たに得られた上記の知見については,日本機械学会(平成8年10月)において発表した.なお,その内容については日本機械学会論文集と国際誌(International Journal of Fracute)に投稿中である.
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