研究概要 |
エントロピーの増大性とエントロピー生成速度の最大性という熱力学の基本原理に立脚した形で非共軸塑性構成式を導出するための一般論を展開し,熱力学的な有限変形理論を構築した.その際,弾性ポテンシャルとしてGibbs関数,また塑性ポテンシャルとして補散逸関数を用いることにより,塑性構成式には必然的に非共軸性が導入されることを示した.得られた非共軸塑性構成式は,補散逸関数を塑性ポテンシャルとする一つの流れ則となるため,塑性ひずみ速度は必ず補散逸曲面に垂直となり,応力と応力速度のなす角が直角以下となる場合にも補散逸曲面に尖り点の存在が保証されると同時に負荷範囲が拡大されることを指摘した. また,共回転応力速度のスピンの選択範囲を制限するために,スピンが満足すべき熱力学的要請を新たに提示した.それは,弾性ひずみが完全なひずみ尺度(状態量=非経路依存量)となるようにスピンに対応する中間配置を選択する必要があり,その時,弾性ひずみを表現するストレッチが必ず存在せねばならないと述べられる.次に,現在スピンの候補となっている連続体スピン,Green-Naghdiスピン,Eulerスピンおよび塑性スピンの本熱力学的要請への適合性に関して調べたところ,各中間配置において弾性ひずみがひずみ尺度,塑性ひずみが変形尺度(非状態量=経路依存量)となり,弾性ひずみを表現するストレッチが具体的に定義できるのは塑性スピンのみであることを明らかにした. さらに,上述の各スピンを用いて矩形板の単調引張りにおけるひずみの局所化問題に関するFEM解析を行った結果,応力-ひずみ線図に振動が生じることなく,せん断帯形成に関してもある程度望ましい結果が得られるのは塑性スピンのみであることを確認した.
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