研究概要 |
精密切削・研削により創成されたマイクロ部品のエッジには必然的に微小バリが形成され,加工面も切削・研削面であり,決して鏡面ではあり得ない.この意味でマイクロ複雑形状部品に対する新しいバリ取り・鏡面仕上げ技術の開発が切望されている. 本研究は,筆者が命名して以来16年間研究を続けている『磁気研磨法』の特長,すなわち,『複雑形状部品の形状精度をそのまま維持しながら,部品表面の面精度のみを向上させ,エッジに生じた微小バリのバリ除去と精密丸味付けを可能とする』特長をマイクロマシン用精密部品にも適用して,新しいマイクロ磁気研磨法の確立と加工装置の完成を目的として研究を展開した. 2年間の活動を通して得た成果は次のようである.(1)拡大モデルを用いたシミュレーション実験と有限要素法磁場解析によってマイクロ磁気研磨法の加工原理を大略解明でき,微細工作物に対応可能な磁極の寸法・形状,磁極配置を明確にした.(2)精密卓上旋盤搭載型のマイクロ磁気研磨装置を設計・作製し,当初の電磁コイル磁場発生源の不備を改善して,レアア-ス永久磁石利用のマイクロ磁気研磨装置を完成させた.本装置にはCCDカメラによる加工状態観察システムと精密エアシリンダによる磁極先端高精度位置決めシステムが設置されている.(3)各種の加工条件を設定して実験を繰り返し,小径の円筒・円管に対する磁気研磨特性を明らかにし,加工機構を考察した.(4)その結果,例えば,従来装置では加工できなかった円筒径1.5mm(SS400)の工作物表面の粗さ4.5μmRyを0.5μmRyの精密表面に仕上げることに成功した.(5)これらの成果は日本機械学会・精密工学会・砥粒加工学会において発表した.
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