研究概要 |
研削の基礎現象である一つの砥粒切れ刃の過渡的切削過程において,常圧焼結窒化けい素の仕上面下に残留するクラックによる脆弱化層深さの定量化を試みた.すなわち,成形ダイヤモンド切れ刃を用いて常圧焼結窒化けい素を円弧系切削することによって仕上面下に生成されたクラック層の深さを,セラミックスの破壊を取り扱う上での基本的手法となっている線形破壊力学に基づいて切削抵抗および切削溝深さなどから導いた.そして,クラック層の深さを解析する上で不可欠な特性値と切れ刃の干渉形状との関係を数種類の形状の切れ刃を用いた実験結果から明らかにすることで,脆弱化層深さを定量化するための手法を提言した.そして,仕上面の下に残留するクラック層の深さを求める過程において唯一その値が定かでない影響領域係数を円弧形切削実験結果から明らかにした. その結果,影響領域係数は切れ刃の干渉形状に大きく関わっており,切れ刃の干渉形状が球の場合には先端丸み半径に応じた溝深さの指数関数に従って溝深さの増加と伴に減少し,干渉形状が円錐へ移ると切れ刃の頂角に応じた一定の値へ連続的に移行することが明らかになった.また,切れ刃の形状と干渉深さによって決定される影響領域係数,切削溝深さ,切れ刃に作用する垂直力ならびに被削材の破壊じん性値およびポアソン比から脆弱化層の深さを定量的に求めることが可能であることを立証した.さらに,この解析手法を研削加工における個々の砥粒切れ刃の切削現象に適用することによって仕上面下の脆弱化層の規模を予測することが可能となる.
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