研究概要 |
試作開発したねじ状工具による歯車仕上げ転造装置と,標準歯形のねじ状工具を用い,標準歯形および代表的歯形誤差である正および負の圧力角誤差を持つ3種類の素材歯車の転造実験を行い,加工前後の歯形を詳細に調べた.その結果,本方式では工具押込み量を大きくすれば圧力角誤差は改善されるが,中凹の歯形になるという問題点が明らかになった.次にこの歯車仕上げ転造システムを知能化するため,上記の実験結果を基に,各素材歯形に対する実転造量分布を求め,それと幾何学的干渉量の比から転造率分布に関する歯形ごとのデータベースを構築した.また、任意歯形のねじ状工具により仕上げ転造加工を行った場合の,加工後の素材歯車形状を予測するための,簡易歯形計算法を提案した.さらにデータベースと、簡易歯形解析法とを組み合わせ,種々の歯形誤差を持つ素材歯車の歯形修整に広範囲に適用できる汎用性のあるねじ状工具の設計,および最適加工条件の推論が可能な,ねじ状工具設計用エキスパートシステムを開発した.このエキスパートシステムで設計された工具修整歯形を若干単純化した,2種類のねじ状工具を実際に製作し,加工実験を行った結果,問題となった中凹の歯形形状はなくなり,圧力角誤差と歯形精度は改善され,提案した歯形予測計算法や,修整歯形工具設計システムの妥当性と有効性が確認された.一方,転造歯形解析において、転造率分布に関するデータベースの構築を,実験ではなく数値解析から直接行うことができれば,システムの一層の知能化が図れる.そこで汎用のFEM解析ソフトABAQUSを用いて,実際の加工状態に近い変形解析モデルを作成した.第一段階として従来の2ダイスプランジ方式による,平歯車転造用2次元平面ひずみFEM解析モデルにより歯形解析を行ったところ,実転造量および転造後歯形に関して,実験結果と解析結果は非常によく一致していた.また解析結果から,実転造量に歯の弾性たわみを加えた値と,最大歯面垂直荷重の間に強い相関関係があり,それらを用いて転造量分布を直接算定できることが明らかになった.
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