研究概要 |
(1)ピストン直径1mmの往復式マイクロ空気圧縮機の実現のため,微細加工および組立が容易な圧縮機構造を提案した.この圧縮機は,吐出し側にはマイクロリ-ド弁を備えるが,吸込側には可動式のバルブがないことを特徴とする. (2)上記構造の試作機を設計,製作し,さらに,性能試験を行った.その結果,無給油条件では最高80kPa(ゲージ)の吐出し圧力を得た.一方,シリンダに給油を行うことにより最高250kPa(ゲージ)の吐出し圧力を得た. (3)レーザー変位計により,吐出し側開放状態で,無給油時のリ-ド弁の運動測定を行った.その結果,弁板はピストン運動に対しておおむね良好に応答していることがわかった.一方で,弁板が,本来閉じるべき行程でも完全には閉じず,弁座から微小量浮き上がっている時期があることが観測された.解析により,無給油時にはこの浮上すきまからの漏れにより圧縮機性能が大きく低下することがわかった. (4)圧縮機内の油の挙動を要素実験で観察した結果,シリンダに供給された油滴は直ちにリ-ド弁上部に上がり,その後,弁板と弁座との間のすきまに長時間滞留しすきまの密封に有効に働くことがわかった.このときの給油量は1時間に1滴程度の微量である.この油の長時間滞留挙動は微小機構に由来する寸法効果とみなすことができ,この種に微小構造の弁に設計に対して有益な知見を得た. (5)今回の試験では,圧縮機の性能上からは,リ-ド弁材料としてポリエチレンフィルムが最も適していた.しかし,高圧下では弁板の耐久性が不十分で,その改良が今後の課題として残された.
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