近年の真空機器の発展は目覚ましいものがあり、真空中で作動する軸受部の潤滑法についての研究開発が急務とされているが、未だ完成されたとは言いがたい。本研究は、真空中で作動するすべり軸受けを磁化することによって、摩耗の低減をはかることの可能性を検討したものである。 油回転ポンプならびに油拡散ポンプで排気されるアルミ鋳物製真空質の容積は、62×66×45mm^3で、回転主軸の先端部に取付けるアタッチメントによって、ピン・ロータ摩耗試験ならびに軸・軸受け摩耗試験を行うことが出来るように構成されている。また荷重はレバ-を介した重錘で与えられ、ピンの磁化は磁化コイルにより、軸受けはその外周にマグネットシートを巻き付けることで磁化される。 1.ピン・ロータ摩耗試験における磁気効果 S45CピンとS45Cロータとの組合せによる乾燥繰返し摩耗試験において、大気圧から5×10^2Pa程度の空気圧までの範囲では、ピンを20mTに磁化することによって摩耗面のフラクタル次元は小となり、その結果総摩耗量は30〜60%減少することがわかった。 しかし10^0Paの真空中では、磁化によって摩耗量はわずかではあるが逆に増加する。 2.軸・軸受摩耗試験における磁気効果 外径φ8f7のS45C軸と内径φ8H7外径φ16 長さ8mmのS45Cすべり軸受けとの組合せで、荷重1N 摩擦速度11.3m/minで摺動させた場合、10^5〜10^3Paの圧力範囲では、軸受けを20mTに磁化することによって、摩耗量は30%程度減少する。また5×10^2Paにおいて磁化しない場合には焼付きをおこすが、磁化によって微細な酸化摩耗粉を生じて摺動可能となる。 しかし10^2Paでは、磁化した場合にも焼付きを生じる。 SUS304軸とS4C5軸受けでは、大気中で磁気効果が認められるが、10^3Paにおいては焼付きを生じる。この磁気効果は、軸と軸受けとの嵌合公差によっても変化するので、さらに検討が必要である。
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