研究概要 |
近年,エレクトロニクス産業の発達に伴う精密機械加工技術の飛躍的発展により,超小型のモータ・アクチュエータ等であるマイクロマシンが実用化されつつある.本研究はこの新しい技術を流れの制御に用いようとする試みである. 一方流体力学の最近の話題として「受容性」の問題がある.「受容性」とは音波等外部からの微小な攪乱が流れの中に取り込まれて速度の変動に変換され,それが成長して流れ場全体に大きな影響を与える過程およびその効率を指す.重要なのは固体表面と流体との間の相対的な運動であるので,音を流れ場に注入する代わりに固体表面が微小な運動を行って同じ結果が得られ,音が引き起こす相対運動は数十〜数百Hzの周波数で数ミクロン〜数十ミクロン程度の振幅なので,固体表面をほんの少し動かすだけで同様の効果が得ることが期待できる.しかも,音の場合には広い領域にほぼ同位相の変動が伝わってしまうのに対し,固体表面を振動させる場合には,局所的あるいは場所ごとに異なる位相の変動の付加等が自由にできる優位点をもっている. 我々は,ピエゾ素子,磁場の中に細いニクロム線を置き,それに交番電流を流すという2つの方法で境界層遷移の能動制御を試みた. その結果,ピエゾ素子を用いるためには,ピエゾ素子の大きさのため平板をくりぬいて設置せねばならず,段差の大きな前向きステップのはく離に関する実験ではうまく行ったものの,境界層遷移の実験に用いるほど小型化することはできなかった.それに対し,磁場の中に細いニクロム線を置きそれに交番電流を流す方法は,磁場をスパン方向に揃えるあるいは,交互にすることで,境界層遷移を引き起こすトルミーン・シュリヒティング波を同位相あるいはスパン方向に互い違いの位相で生成できることができた.この成果は,日本機械学会論文集に投稿中である.
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