研究概要 |
本研究の目的は,乱流中に瞬時放出された物質拡散場の瞬時濃度場計測システムの完成と,乱流拡散場の数値予測モデルの構築にあり,以下の研究成果が得られた. 1. 瞬時濃度場計測システムの完成 計測手法として,レーザ誘起蛍光法(LIF法)を採用し,物質拡散場の瞬時濃度場計測システムの完成を目指した.本手法は,非接触計測という点に加え,濃度場の空間的情報が得られるという利点をもつ.LIF法で濃度場を定量的に精度良く計測するためには,拡散物質として用いる蛍光色素の選定が重要となる.ここでは,ローダミンB,ローダミン6G,およびウラニンの3種類の色素を用意し,それぞれの蛍光および吸収スペクトル分布を調べ,システムで使用するレーザ光(YAGレーザ)の発光波長532nmに適合する色素として,ローダミンBとローダミン6Gの2種類を選定した.また,濃度と蛍光強度の間の線形性についても調べ,1mg/l以下の濃度範囲で十分な線形性が得られていることを確認した.以上のことから,本計測システムを用いて瞬時濃度場の計測が十分可能であることを確認した. 2. ラグランジュ手法を用いた乱流拡散場の数値予測モデルの構築 乱流速度場をDNS法のようなオイラー法で解き,それを利用して物質拡散場をラグランジュ的に扱うことで,両者をハイブリッドさせて変動濃度場の高次統計量を数値予測する手法を提案した.速度場・濃度場を共にオイラー的に扱う従来手法に比べ,本手法は高プラントル数拡散場に適用可能であり,さらに,原理的には任意の高次統計量を求められるという利点を持つ.そして,本手法を時間減衰一様スカラ場に適用することで,変動濃度場の統計的特性に対するプラントル数の影響を明らかにした.
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