研究概要 |
本報告は要素的渦と考えられる渦輪と渦対に関する実験的研究である.渦定理によれば渦はそれ自身で閉じているか,あるいは流れの境界(固体壁,または自由表面)から境界につながっていなければならない.渦輪は前者の形態をもち,それ自身で閉じている.一方,実験室で作られる渦対は後者の形態をもつ.本報告で対象とする渦輪や渦対はこの意味で要素的であると同時に基本的渦と言える.要素的かつ基本的ではあるが渦輪や渦対はそれ自身特徴的な流れを作り出す要因を内在する特異な流体部分である.例えば,渦輪の場合にはそれ自身で,渦の引き伸ばし,ねじれ,渦度集中,拡散,渦管の波状変形,周囲流体の連行などの現象を引き起こす要因を内在させている.こういう現象が複雑に入り交じっているのが乱流と考えられる.それゆえ,渦輪,渦対の研究はそれ自身興味ある研究対象であるが,乱流の理解にも重要な情報を与えてくれている. 現在,渦同士,または,渦と物体表面との干渉は,渦の力学の重要な研究テーマの一つとして注目されている.本研究の意義は,渦輪・渦対が固体表面と干渉する際の基本的流れ場の様子を実験的に明らかにしたことである.本研究では,具体的な固体表面として第一に平板を,そして第二に細い円柱を選んでいる.前者は,渦と固体表面の干渉を考えるとき最も基本的なものとして位置づけられる物体である.それに対し,後者は渦の制御という工学的意義をも含んだ基本的なものとして興味ある物体である.煙可視化法により流れ場を時間的・空間的に詳細に調べる実験的手法は本研究における主要な計測法であり,この方法によりいくつかの興味ある知見を得ている.なお,これらの研究成果は,日本流体力学会,アジア流体力学会議,および博士論文等において論文発表した.
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