研究概要 |
電子顕微鏡写真から得られる煤の一次球形粒子径、一次球形粒子凝集体のフラクタル次元,ならびに一次球形粒子数分布に関するデータを,錯乱強度非対称比のデータと組合わせることにより,エチレンの濃予混合火炎中に浮遊する煤凝集体の一次球形粒子数分布と体積平均直径を推定する方法を検討した.凝集体の錯乱特性を与えるモデルとしては,厳密な凝集体散乱理論に基づいて作成された等価球近似法と,電子雲のX線錯乱に対する近似理論であるGuinier lawもしくはRayleigh-Debye-Gans近似法を利用する方法を,互いの精度を比較検討する目的で併用した.そして,火炎軸に沿っての煤粒子の成長の様子を調べるとともに,解析に使用する煤の複素屈折率の値が結果に及す影響の程度を検討した.その結果を要約すると,以下のようになる. (1)凝集体の形状はマスフラクタル指数法則に従うランダム分枝鎖に近く,しかもフラクタル次元はサンプリング時の合体によっても変化せず,1.60程度である. (3)等価球近似を用いる方法と,Rayleigh-Debye-Gans近似を用いる方法との間に大差はないが,後者の方が電子顕微鏡データに近い結果を与える. (3)火炎軸に沿って,一次球形粒子径の僅かな成長と,凝集の顕著な進行が見られる.しかし,凝集体形状(フラクタル次元)と,一次球形粒子数の分布形状(幾何標準偏差)は,ほぼ一定に保たれる. (4)凝集体形状と一次球形粒子数の分布形状に比べれば,複素屈折率が測定結果に与える影響は軽微である.
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