本研究では2成分系の凝固によって生じる組成対流と結晶形態の関係を明らかにする目的で、対流を制御させて結晶形態の変化およびその熱、物質輸送過程を実験的に調査した。2成分系として過共晶濃度の塩化アンモニウム水溶液を用い、塩化アンモニウムの結晶を下側から一様に成長させた。また対流を制御するため、溶液に増粘剤であるポリマーを微量添加した(1wt%)。マッシ-と呼ばれる結晶と水溶液とが共存する層内の温度と濃度を自作したマイクロブローブで同時測定することにより過冷度を評価した。一方、結晶形態はビデオマイクロスコ-ブで観察した。主要な結果は次の通りである。 1 増粘剤の有無にかかわらず、マッシ-層内は界面近傍を除いて熱力学的平衡状態が保持される。 2 界面近傍の過冷度ΔTは結晶成長速度sと関連し(s∝ΔT^2)、増粘剤混入は過冷度を約1℃増加させる。 3 マッシ-層内の物質収支から平均固層率を推算したところ、増粘剤を混入しない場合は0.08であり、混入した場合は0.045に減少した。固相率の減少は、デントライト結晶の2次アームが大きく成長し、結晶間隔が大きくなることが原因である。したがって、対流の抑制が結晶構造を粗にする傾向がある。この理由は今後の検討課題とする。
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