研究概要 |
多孔質モデルとしてHele-Shaw管群を導入することにより,高レイノルズ数域での多孔質流れは乱流に遷移することを明らかにした.また,多孔質内部の乱流渦構造に関して,基本的に固体に囲まれた空隙スケールでの近距離渦混合と固体寸法スケールでの固体まわりを迂回する流れによる長距離渦混合の作用であることを示した.さらに,実験によって得られた結果は,増岡らが提案した多孔質内乱流モデルにおける空隙渦ならびに疑似渦の概念を十分支持するものである. 次に,Hele-Shaw管群の実験に加えて一列球充填層の実験を行い,乱流渦構造への内部幾何構造の役割を検討することにより,多孔質乱流現象の素過程について言及した.スペクトル解析により,固体を迂回する流れによる混合距離は構造体スケールのオーダーであることを示すとともに,この混合は主としてエネルギの交換をもたらすことを実験的に明らかにした.さらに,Forchheimer抵抗が層流の形状抵抗ではなく乱流渦混合によるものであることを,可視化結果より明らかにしている.また,多孔質内部固体の存在は,多孔質構造体スケールより大きな渦を空隙スケールへと散逸させる効果をもたらすだけでなく,固体周りの局所的な渦度の形成により乱れの生成をもたらすことを実験的に明らかにした. 以上の実験結果を基に,多孔質内の乱れの生成および散逸機構を詳細に検討することにより,多孔質内のマクロな乱れエネルギ方程式を検討した.本モデルにより,多孔質内では,内部固体の存在により多孔質構造体スケールより大きな渦へと発達しようとする渦を空隙スケールの渦へと散逸すること,内部固体によって流体に対して強制的に渦度がもたらされ壁面せん断乱流の生成することなど,多孔質固有の乱れの生成および散逸機構を理論的に明らかにした.さらに,多孔質内でのKolmogorovの長さスケールを評価している.
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