研究概要 |
車の運転視野の確保にワイパが用いられるが,近年,撥水剤の併用に伴い,ワイパの自励振動が顕著となり,抜本的解決が求められている.本研究はカオス解析によりワイパの自励振動発生の解明と振動発生時のモード同定に関する研究を行った. 1.実車の実ワイパの自励振動実験 (1)曲面ガラス上のワイパの挙動を高速度カメラで計測した.主要な振動挙動は系の回転軸中心の振動とワイパ・ブレ-ド支持部中心のピッチング形振動の連成振動であることを明らかにした. (2)回転平面ガラス上の掃引実験により,ワイパ・ブレートとその支持フレームの横断面内の連成が自励振動に大きく寄与することを明らかにした. (3)ワイパの長手方向の影響を除いた二次元ワイパ-モデルで実験を行った.ワイパの自励振動がブレ-ド変形に伴うスティック・スリップ形の自励振動であることを明らかにした. 2.ブレ-ド変形挙動を考慮したワイパ振動の実験 (1)ブレ-ドの変形特性を求め,初期滑り出しの実験を行った.ブレ-ドは漸軟・漸硬の非線形ばね特性を持ち,座屈直後の変形が最適払拭条件と一致することを解明した. (2)非線形変形特性を考慮したワイパ振動の数値シミュレーションを行い,自励振動の発生に及ぼす連成ばね特性の影響を明らかにした. 3.カオス解析を用いたワイパ・モデルと実車ワイパの振動モードの同定 (1)ワイパの非定常振動に対し最大リアプノフ指数による振動モード同定の方法を導入し,ワイパブレ-ドが初期の間欠飛び跳ね現象によりスティック・スリップ形自励振動に至ることを初めて明らかにした. (2)実ワイパでは,初期に自励振動では多くのモードが誘起され,成長の後,先の二自由度系の自励振動となることを解明した. 主要な結果を自動車技術会と日本機械学会の講演論文にて発表した.今後の課題は連続体力学モデルにより自励振動挙動の解明を行い設計基準の資料を提供する必要がある.
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