研究概要 |
FRP積層材料は軽量化や高強度化,成形が容易であることなどの有利な点が多いため,種々の構造物に使われている。FRP積層材は,とくに穴あけ加工の際には積層面での剥離が発生しやすい。切削時に比較的小さい振動荷重を加えることによって切削が困難な材料を切削することができ,仕上げ精度が向上する例が報告されている。しかしながら,このような振動荷重を加えながらFRPを切削する方法について検討した研究はほとんどなく,剥離が発生しないような加振方法についても明らかにされていない。本研究では,このような観点からとくにFRP積層材料の穴あけ加工に着目し,振動荷重を利用して積層面に剥離を生じない方法を開発することを目的としている。 まず,FRP積層材料を加振しながら穴あけをする実験装置を作製し,ボール盤を対象とした実験を行った。加振部としては,比較的加振装置の取付が容易であるテーブルを選んだ。加振する振動数・切削速度・工具材料・工具径を変えて実験を行った。剥離は切削面での表面粗さで考えた。表面粗さの記録から,粗さが大きい場合に積層面での凹凸が大きく,表面粗さが大きいと積層面での剥離が起きていると考えられる。実験の結果,いずれの条件においても加振しながら穴あけをした方が剥離がおこりにくく,加工後の加工面の表面粗さが小さくなることを明らかにした。次に,実験で得られた結果を理論的に求める方法を開発した。力学モデルとして積層面を減衰要素とし,切削中に積層面に吸収されるエネルギに注目した。このエネルギを用いて積層面での弾性変形を考慮しない場合と考慮した場合について積層面での剥離が発生しない条件式を示した。
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