研究概要 |
機械製品は,図形(多くの場合,剛体)を空間中に配置したもの,と見なすことができる.配置された図形間で,適切に力や運動のやりとりを行なうことで,機械製品の様々な機能が発現される.本研究の目的は,このような図形間の力学的なインタラクションが高速に処理可能な,図形の配置手法を開発することである.以下に本研究の成果を示す. 1. 公差解析 機械部品の形状には,微小な誤差が必ず含まれている.これらの誤差は,製品の力学的な挙動に様々な悪影響を与える.機械設計では,許容できる誤差の範囲を公差として指定することで,誤差の影響を管理する.本研究の成果の一つは,組み付けられた部品の,公差に起因する位置姿勢の曖昧さに関する理論を構築し,これを代数的に計算する高速なアルゴリズムを開発したことである. 2. 効率的な干渉チェック 機械製品では,多数の部品がごく狭い領域内に密に配置される.また部品間に生じる接触関係の多くは,定型的かつ固定的である.本研究のもう一つの成果は,このような機械特有の性質に基づいて,図形間の干渉判定の結果を記録しておき何度も再利用することで,従来よりも効率的に干渉を検出する手法を開発したことである. 3. 頑健な幾何計算 実数値データを持つ図形を扱う場合には、浮動小数点演算などの誤差をともなう計算が必要になるため,その誤差が原因でプログラムの処理が破綻するという問題が発生する.数値誤差を図形の形状誤差と見なすと,機械製品の公差の扱いに関する研究成果を利用することで,図形処理プログラムを頑健にできる.本研究の三つ目の成果は,この考え方に基づいて,幾つかの複雑な図形処理を安定に実行するアルゴリズムを開発したことである.
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