近年の世界各国における電力供給・送電ネットワーク使用に関する規制緩和により、IPP(独立系発電業者)に代表される多数の分散型電源が電力市場に参入し、電力託送を行う傾向にある。もし多くの電力託送が行われ、かつ送電ネットワークの輸送能力に余裕がない運転状況では、特定地域の送電線路群に混雑が発生し、場合によっては線路過負荷が生じる危険性がある。 本研究では、このような開放化された電力ネットワークで起こり得る、不確実性を伴った電力フローの偏りを「電力ネットワークの知能化」により解消する方法の基礎的研究を進めた。具体的には、電力フローをネットワーク上で可制御にするパワエレベースの位相調節器や直列コンデンサ、電力貯蔵装置の制御機構にインンテリジェンスを埋め込むための工学的手段に関する検討を行った。 本研究で得られた主要な成果をまとめると以下の通りである。 1.電力ネットワークに分散配置された複数の位相調節器による電力フロー制御において、各位層調節器が自律分散的に動作できるためには、位相調節器の協調を図る機構が必要であり、その機構を各位相調節器のローカルコントローラに組み込むために基本的方法を明らかにした。 2.位相調節器群の配置に固有の可制御な電力フローパターンを、位相調節器の制御角に対する電力フローの感度と固有値解析手法を利用して明らかにする新しい方法を考案した。 3.特定の電力フローパターンを実現するための送電ネットワークのインピーダンスの変更量および電力貯蔵装置群の充放電量を、非線形最適化問題の解法を利用して決定する基礎手法を開発した。
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