研究概要 |
本研究は、SF6ガス消弧基礎特性とそれに及ぼす各種遮断器材料の混入による影響を、正確に評価できる標準試験誘導プラズマ装置の開発を主たる目的としている。本プラズマ炉の特徴は、電極を用いない誘導結合加熱方式によるクリーンで純粋なSF6ガスを発生できるとともに、異物粒子や異種類のガスの導入が可能なことであり、発生させた高温SF6中のF原子の電子付着性すなわち電子密度低減効果に及ぼす電極材料混入の影響を実験的に定量化できる点である。平成9年度ではSF6に加え、環境適応型ガスとしてのN2も実験検討項目に取り込みこれらを比較しながら、以下の主要な成果を得た。 1)高気圧SF6誘導プラズマの発生 前年度では圧力200torrまでの中圧でSF6誘導プラズマの発生に限られていたが、本年度でははじめて760torr,1気圧でこの消弧ガスのプラズマを安定に発生することができた。これにより実際の電力用遮断器の動作条件により近い状況が再現でき、標準試験装置として完成度が高まった。他の消弧気体であるN2ガスを用いても1気圧誘導熱プラズマの発生に成功した。 2)SF6,N2誘導熱プラズマの温度場の計測 S,N原子およびAr原子からのスペクトル線強度をマルチチャンネル分光器で同時測定することにより発生した高温場の温度分布計測を行った。10,000K程度の高温状態となっているが、SF6ガスの場合プラズマが半径方向に強い収縮作用を有することが判明した。 3)銅蒸気混入によるプラズマ半径の増大 電極材料の銅を不純物として約1%程度プラズマ中に混入させ、特性の変化を測定した。その結果、銅蒸気の混入によりプラズマ半径の増大効果が認められ、遮断性能を低下させる可能性があることが判明した。
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