研究概要 |
一般の理工系研究室(3φ220V/3系列の電源設備を想定)で実験できる超広帯域マイクロ波コンパクト自由電子レーザ(FEL)を目指して研究を進めた.これを纏めると次の通りである. 1. ヘリカル構造のソレノイド誘導型ウイグラーの開発.平面構造の研究から出発し,これをヘリカル構造の研究に展開して,周期長λ_wが短くなると磁場強度は平面の場合と同等になることを見出し,この研究目的にかなうλ_w=16mmについてその特性を明らかにした.平面の場合と違って電子ビームに集束性を有し,このヘリカルウイグラの実験研究は他の文献には見当たらない. 2. CO_2レーザ加熱LaB_6陰極による電子ビーム系の設計.当初の外部陰極電源から真空チャンバー内の陰極電流を制御する方式から,電池による内部陰極電源方式で外部からのレーザー光照射による電流制御方式に変えたが,結局は外部からの高強度CO_2レーザー光による陰極加熱方式を採用するに至った.これは出力70WのCO_2レーザー装置が当研究室で使用可能となったためであり,真空チャンバー内の装置の簡素化,電子ビーム電流制御の容易性,高電圧の耐圧,安全性の確保が飛躍的に向上した.このため平成10年度予定の電子ビーム技術の確立は,その新方式の電子銃の設計に止まる結果となった. 3. この装置によるFEL動作の解析.λ_w=16mmの場合,ソレノイド磁場3kG,ウィグラー磁場250Gで,ビームエネルギーE_b=111-200keVの変化域に対して,発振周波数は15.4-37.2GHz(波長19.5-8.1mm)の間,連続可変になる.またE_b=120keV,ビーム電流,I_b=50mA(P_b=6kW)で,飽和出力はP_〓=P_b/(4N_w)=50W(周期数N_w=30),小信号利得は0.4%となる. 以上により,本研究の目的とする超広帯域コンパクトマイクロ波FEL装置の基本的な技術基盤は確立されたと考えている.今後この装置の完成に向けて努力する考えである.
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