研究概要 |
ジアゾ系物質を高分子絶縁物に添加した材料を用いて、添加剤による交流部分放電(PD)の低減効果について研究を行った。対称としたPDは、絶縁物表面と高電圧導体との接触点(Tripple Junction,(TJ))で発生するもの、および絶縁物内部のボイドで発生するものである。使用したジアゾ系添加剤は、主としてp-アミノアゾベンゼン(Ab:アゾベンゼンに電子供与基を付加したもの)およびp-ニトロベンゼンアゾレゾルシン(Nb:アゾベンゼンに電子供与基と電子受容基を付加したもの)である。以下に、本研究によって得られた成果の概要をまとめて示す。 1.TJにおけるPDの低減効果:(1)部分放電開始電圧付近において、添加濃度0.05%のAb添加PMNlフィルム(Ab試料)のPDパルスの放電電荷および発生数は、他のフィルム試料と比べると、50%以下に低減される。(2)Ab試料におけるPDの低減効果は、特にPD開始電圧付近で顕著に現れる。(3)印加電圧がゼロクロスにおける試料表面の帯電電位は、電極とフィルムとの接触点付近で、添加剤の種類によって極性が異なる。(4)Ab試料におけるPDの低減減少は、Abが電子供与性の物質であることを考慮すると説明ができる。 2.ボイドにおけるPD低減効果:(1)ジアゾ系物質をPEに添加することによって、ボイドで発生するPDを抑制することができる。(2)添加剤の濃度はAb試料,Nb試料のいずれも、0.05wt%〜0.1wt%の範囲において、PDの抑制効果が最も高く観測される。(3)PDの抑制効果は、PD開始電圧付近の印加電圧において顕著に観測さる。(4)いずれの添加剤でも、PDパルスの放電電荷量の積算値(600cycles)および発生数は、無添加試料と比較して、約90%の低減効果があった。(5)これら添加剤によるボイド放電の低減効果は、添加剤分子がボイド壁面に蓄積する電荷をトラップすることによるものと考えられた。
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