研究概要 |
マイクロ波発振回路とアンテナ素子とを一体化した能動集積アンテナにおいて,発振回路中の能動素子に光を照射することにより発振状態が変わることを利用して,発振周波数の光制御もしくはアレーアンテナ放射ビームの光信号による走査を行った.能動素子としてFETを使用し,円形パッチを2つに並べた構造,および方形パッチを用いたアクティブアンテナを取り扱い,まず1素子の場合の発振特性,放射特性を調べ,次に2素子を並べたアレーアンテナについて,逆相ならびに同相同期して発振した場合の放射特性を測定した.さらに3素子のアレーアンテナも試作した.それぞれの場合に対し,光照射しない場合と照射した場合の特性の変化について測定を行い,また計算機シミュレーションによる放射パターンと測定結果とを比較・検討し,素子間の発振の位相差を推定した.得られた結果を通じて,(1)アクティブアンテナの発振素子のFETに光を照射することによって固有周波数は変化すること,(2)空間への放射波を通じて弱結合したアクティブアンテナアレーの場合は両端の素子への光照射によって発振器の発振の位相関係が変化すること,(3)またそれによって合成されたビームは走査できることなどが確認された.これらの結果は多素子のアレーアンテナに応用することができ,鋭いビームを形成した上で,ビーム走査を光信号によって行うことが可能である.このアレーアンテナは移相器を一つももたないだけでなく,高周波給電回路や発振の結合のための線路もなく,直流供給回路をもつのみで特に簡単な構造となっている.光による制御は電気信号による制御に比べて高速であるとされ,また放射するマイクロ波信号と制御する光信号とは電気的なアイソレーションが良い.これにより高周波回路とその制御回路とをほぼ独立に設計することが可能となり,設計の簡単化さらには小型化にも有効である.
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