研究概要 |
本研究の目的は,線形ブロック符号の多段階復号法において,各要素復号器間での情報授受に軟判定出力を利用することで,全体の誤り制御特性を向上させることである.本研究遂行のためには,効率の良い軟入力/軟出力復号器の実現が必要となる.そこで,2年計画の1年目である平成8年度の研究においては,軟入力/軟出力復号を行うための再帰的logMAPアルゴリズム(R-logMAP法)を開発した.R-logMAP法では,復号を行う際に線形符号の構造的性質を利用することで必要となる計算量を削減している.計算機による模擬によってR-logMAP法と従来のBCJR法の計算量(メトリックの加算相当演算数)を比較したところ,例えば符号長128の2次Reed-Muller(RM)符号の場合,R-logMAP法の計算量はBCJR法のわずか3%程度であることが明らかになった.プログラムを一部変更することで,R-logMAP法を(軟入力/軟出力の意味で)最適な復号法であるMAP法の再帰的復号法R-MAP法に利用することが出来る. 平成9年度は,多段復号の各段において軟入力/軟出力復号器を利用し,全般の復号を軟判定出力をフィードバックして繰り返し復号を行う方式について考察を行った.多段階復号法については,研究代表・分担者によって既に,前段からの硬判定出力を伝えるclosest coset復号法については詳細な研究が行われている.closest coset復号法において,段階間をlog-MAP法およびMAP法による軟判定出力で置き換えた繰り返し方式について検討し,その復号複雑度および誤り制御特性の改善度を模擬によって評価した.その結果,例えば長さ64の2次Reed-Muller符号に対して,log-MAP法とMAP法を用いて,それぞれ繰り返し回数2回,5回の復号を行う場合,ブロック誤り率10^<-5>付近では,それぞれclosest-coset法に対して約0.4dB,約0.5dBの改善が得られ,理想的最尤復号法との差は,それぞれ約0.6dB,約0.5dBであることが示された.その際必要となる復号複雑さは,たとえばLog-MAP法の場合,理想的最尤復号法の復号複雑さの約1/5程度である.
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