研究概要 |
群の構造から決まる状態空間内の軌道と,力学系の時間発展から決まる軌道の両性質を用いて,状態空間を不変部分空間に分割する効果的な手法の開発,および分割後の各部分空間内外で生じる分岐現象の数値解析法を研究した.この手法により,環状結合回路にみられる大域的な非線形現象,たとえば対称なカオスが対称性を失ってより複雑なカオスへと変化する現象など,の分岐構造を解明できるようになった.2年間を通じて次の諸点を研究した. 1 不変部分空間を得るための座標変換を見いだす研究.回路の構造毎に適当な座標変換を見いだし不変部分空間の構成および各部分空間内での運動方程式を求める変換手法を確立した.特に少数個の発振器の周期振動について分類方法を碓立した.また,各種分岐現象の分岐条件と系の構造の関係を明らかにし,計算の手順を確立した 2 結合発振回路のアトラクタに関する研究.対称性を持つ数式モデルについて,周期解やカオス解の同期現象,脱調現象などについてアトラクタの生成,消滅等の分岐理象を解明した. 3 カオス振動のみられる強制系(Duffing方程式やDuffing-Rayleigh方程式など),塩水・真水振動系やChua回路のような自律系を種々の方式で結合し,生じる分岐現象を解析した.特にホモクリニック分岐の連鎖によるカオス振動への進展過程などを見い出した. 4 結合回路網の「結合部分回路」の性質を変えた場合を考察し,アトラクタの対称性保存分岐,破壊分岐の発生するメカニズムを2,3の具体的な対称性を持つ回路で解明した.特にホップ分岐が不変部分空間で順次発生する機構や,対称性破壊分岐後のリミットサイクルがカオス振動へと分岐してゆく過程を解析した.
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