研究概要 |
半導体レーザは小型,軽量,変調が容易である等の点から光通信方式に広く用いられている.しかし,一方僅かな電流や周囲温度の変化で発振周波数が変動し,コヒーレント通信など今後の高度な通信においてはその周波数の安定化が必要である.従来は,周波数基準として一枚のファブリペロ共振器を用いていたが,共振のQの値が低く十分な特性ではなかった. そこでまず最初に,共振周波数の近い二枚のファブリペロ共振器を一組とし共振曲線が交差するようにして一対の共振回路を構成し,共振出力の大きい方を弁別回路で取り出すようにした.この共振曲線の交点を安定化周波数とすることにより,一枚のファブリペロ共振器と比較して6倍ほど高い周波数弁別特性を得る事が出来た. 次にこの共振器対を用いて,出力の大きい方をそのまま取り出す尖頭値方式と,出力の極性を反転して取り出す反転方式の2種類の安定化方式について検討した.尖頭値方式では,回路構成は簡単であるが安定化の引き込み範囲が狭い欠点がある.一方,反転方式では回路構成が多少複雑になるが安定化の引き込み範囲が広く実用的であると考えられる. この共振器対を用いて実際に半導体レーザの発振周波数の安定化を行なった.その結果,二枚のエタロンを用いた場合には一枚のエタロンを用いた共振器と比較して,安定化時のアラン分散の平方根が一桁程良好になる結果を得た.また,温度特性,角度特性についても検討したが,実用上はほぼ差し支えない事を確認した.
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