研究概要 |
本研究では,人間の特性を考慮しつつリスク認知・判断・決定を支援する「認知支援情報制御機構」と,大規模複雑系の安全確保の観点から人間を支援する「自律安全制御機構」を構成するための証拠理論的手法を与えた.すなわち,時間経過につれて観測・入手される不完全な証拠(命題)を用い,Bel関数とPls関数を動的に更新するための新しい情報統合・更新規則を開発した.これらの情報統合規則,情報更新規則は,いずれも稲垣が開発した一般化情報統合規則(IEEE Trans.Reliability,1991)に基づいたものであり,安全制御の対象となるシステム・リスクに関する人間の選好を明示的に反映させることができる点に特徴がある. また,システム安全制御方策として,通常は純粋戦略のみを考察するが,本研究では,安全制御が混合戦略によって実行される場合も解析することができる. さらに,状況の動的推移,対応に要請される緊急度,判断・決定に不可欠な観測情報に含まれる不確実性とその特性,メンタルワークロード,システム制御方策に関する人間の選好などに応じて,人間と自動化システムとのあいだでタスクや決定権を適応的・動的に分散させるための方法論を開発し,適度の複雑性(制御ならびに状況認知・予測の困難さ)を有する複合現実マイクロワールドのもとで認知工学的検証実験を行い,実用場面での人間支援の有効性を解析・評価した.
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