研究概要 |
(1)線虫(C.elegans)の寒天培地上の自由行動,及び寒天培地に予め誘因物質などの化学物質を与えておいた場合の走化性などの特徴パラメータを求める目的で,寒天培地上の線虫の顕微鏡画像を,VTRに記録するシステムを制作した。VTR再生画像をコンピューターに入力して,線虫を含む小領域画像を追跡するソフトウエアを作成した。 (2)寒天上にバクテリアを貼付した条件下,またはバクテリア貼付しない条件下で,野性種(N2)の前進・後退・停滞の各状態にいる滞在時間、及び運動方向変化の間の時間間隔を測定した。滞在時間,時間間隔のヒストグラムは数個の指数関数の和で表現できることが判明した。行動異常変異体に関するヒストグラムも同様い解析して,野性種との違いを明らかにした。 (3)化学物質存在下で餌のバクテリアを食べる際の咽喉部筋肉の周期的動きを,2次元パワースペクトルを求めることにより解析した。咽喉部筋肉の周期的動きに着目して、アルコールの麻酔作用からの回復を,数理モデルを作って解析した。 (4)GABA受容体サブユニット内の1つを欠損する変異種を作成する目的で,リバースジェベティクス法を用いる実験を準備した(未完)。線虫ゲノムプロジェクトで公表されたDNA配列からGABA受容体と考えられる物を選び出し,高等生物のGABA受容体DNA配列との違いを明らかにした。また,線虫のGABA受容体の状態と比較するための対照実験として,ラットのGABA受容体をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させて薬理学的機能を調べた。 (5)運動・行動の特徴量を基に線虫に似たヒモ状モデルが粘性物質の表面を移動運動するモデルを,計算機内に作成して解析した。線虫の神経間結合のデータベースをWhite等の論文等を基に作成した。神経細胞-神経細胞及び神経細胞-筋肉細胞の機能的結合を,汎用神経回路モデルソフトウェアを用いて計算機上に作り,シミュレーションを実行した。
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