研究概要 |
本研究では被験者の好みのニオイ刺激や不快なニオイ刺激を受けているときの生理指標から,快適感や不快感を評価することができるかについて検討を行った.その結果,快適臭と不快臭ではニオイ刺激中のカオス性の時間変化が異なり,快適臭では時間が経つにつれカオス性が低くなる傾向が見られた.また得られた種々の生理指標に対して重回帰分析を用いることにより,生理指標から快適感をある程度予測することができることを示した.また説明変量をうまく選択することで重回帰式のあてはまりを良くすることができ,快適感や不快感をより良く求めることができた.今回は環境の中の1つの状態であるニオイを変化させたときの快適感,不快感を求めたが,このシステムを用いることにより音や画像などに対する快適感にも応用できると思われる.ニオイの好みは人によって異なり,色や音楽の好みも人によって異なる.また快適な環境というのは人により少しずつ異なると思われる.このシステムでは快適感という主観量を定量化することができ,人が快適と思う空間を同定することができる.そのため,そのシステムを用いることによって複数の人がいる場合でも,それぞれの人が同時に快適と思われる空間を作り出すことが可能と思われる.刺激や環境変化に対する生理的反応と精神的反応が時間的に変化する様子を本研究で開発した快適感評価メカニズムを用いたリアルタイムモニタリングシステムを小型計算機上に構築した.今回構築した快適感,不快感リアルタイムモニタリングシステムを用いて刺激や環境の変化によってもたらされる無意識下での人間の適応化過程を調べることが可能となった.
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