研究概要 |
水中や海水中に代表される湿潤腐食環境下で繰返し荷重を受けるコンクリート構造物は,その疲労寿命が気中環境におけるよりも15〜20%と大幅に低下するばかりでなく,破壊様式も気中のそれとは異なる。すなわち,気中では主鉄筋の疲労破断による曲げ破壊をする部材であっても,水中では(1)せん断破壊になり易い。また,仮に水中で曲げ破壊する場合でも,その破壊様式は,(2)コンクリートの圧縮疲労による破壊が生じること,主鉄筋の疲労破断による曲げ破壊をする場合には,(3)その疲労寿命は気中よりも水中で,水中よりも海水中で短くなること,などを明らかにした。特に,(1)〜(3)までの定量化に関しては,(1)ではスターラップのせん断分担力の推移を含めたせん断疲労破壊機構の解明,(2)ではコンクリートの圧縮応力ブロック形状の推移,に着目した研究を実施した。そのため,まず,コンクリート強度,鉄筋比,せん断スパン/高さ比(a/d),せん断補強鉄筋の有無,等を要因に選んだ鉄筋コンクリートはり(RCはり)の疲労試験を気中,水中,海水中で実施し,各試験要因がRCはりの破壊様式や疲労寿命に及ぼす影響を既往の研究も併せて分析・解析した。つぎに,湿潤腐食環境下のコンクリート構造物にエポキシ樹脂塗装(遮水)や炭素繊維補強プラスチック板ないしはシートを接着(遮水と補強)することによる延命効果を検討し,耐疲労性に富むコンクリート構造物を開発するための基礎研究を行った。さらに,せん断疲労破壊を対象とした実験からは,(a)水中でのせん断補強鉄筋の無い棒部材のせん断疲労耐力式を提案できる段階に,(b)繰返し載荷回数に伴うせん断補強鉄筋(スターラップ)のせん断分担力の推移についても,スターラップのひずみが水中でも計測できる段階に,達した。コンクリートの圧縮破壊型の曲げ疲労性状に関する研究からは,コンクリート強度の相違はコンクリート構造物の疲労破壊様式や疲労寿命にそれほど影響を及ぼさないこと,繰返し載荷回数の増加に伴う中立軸の推移もそれほど大きな変化をしない,等の知見が得られた。
|