研究概要 |
繰返し塑性ひずみが鋼材の破壊靱性に与える影響と繰返し塑性ひずみを受けた鋼材の破壊靱性にひずみ時効が与える影響をシャルピーの衝撃試験によって調べた.3.0サイクルまでの塑性ひずみの繰返しによって破壊靱性が低下する.繰返し塑性ひずみによる破壊靱性の低下を単調塑性ひずみによる破壊靱性の低下に関連付ける,等価塑性ひずみを与えた.大きな等価塑性ひずみを受けた鋼材は時効処理の影響を受ける.すなわち大きな等価塑性ひずみを受けた鋼材は時間の経過とともに破壊靱性が低下する. 阪神・淡路大地震を受けた鋼桁橋の主桁と鋼製円柱橋脚の破壊靱性をシャルピーの衝撃試験で調べた.前節の結果を用いることにより,地震時に,橋桁は繰返し塑性ひずみを受けていなかったが,橋脚は繰返し塑性ひずみを受けていた.現在の鋼材と比較して,建設当時の鋼材は破壊靱性が非常に低く,異方性が大きいことを示した. 繰返し塑性ひずみが高サイクル疲労に与える影響を円柱試験片の疲労試験で調べた.最初,繰返し塑性ひずみを低サイクル疲労としてひずみ制御で与えた後,高サイクル疲労試験を荷重制御で行った.円柱試験片は平滑のものと弾性応力集中係数が2.4から2.8の突起を持つものを用意した.応力集中を有する鋼材は数回の塑性ひずみの繰返しを受けると,高サイクル疲労寿命が大きく低下する.高サイクル疲労に対して,塑性ひずみの繰返し回数が影響するのか,塑性ひずみを繰返すことによって累積する塑性ひずみの大きさそのものが影響するのか,新たな問題が存在していることを示した.
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