研究概要 |
軸力のみを受けるトラス部材(リンク部材)を断続的に配置し,これを引張り力にのみ抵抗するケーブルで連結し,部材長を調整することによってこれらの部材にプレストレスを与えると,力学的に安定な骨組み,いわゆるテンセグリティ構造となる.本研究では,このような構造系について主として構造解析の面から基礎的な考察を加え,将来の実用化に向けて設計計算手法を確立することを最終の目的としている. この種の構造系は土木工学の分野ではまだ実用化されるにはいたっていないが,建築の分野では大スパン屋根構造への適用例が若干見られる.本研究では,将来土木構造の分野でもこの構造のアイデアが応用可能か否かを知るために,これについて基礎的な立場から解析・設計上の問題点を抽出し検討を加えたものである. 本研究で実施した内容は概略以下の通りである. 1. テンセグリティ構造を厳密に解析するには,幾何学的非線形(大変形)を考慮した解析が必要であり,そのための専用数値計算プログラムを,既往のケーブル構造に関する研究成果に基づいて開発した. 2. 基本的な構造要素の力学的特性に関する各種のケーススタディにより,外力(とくに偏載荷重,非対称荷重)の作用下では著しい非線形性が現れることを示して線形理論の限界を明らかにし,上記の非線形解析プログラムの必要性・有用性を確かめた.種々の試算によってこの構造の強度の非線形性を明らかにした. 3. 上記のようなこの構造固有の大変形性状から見て,実際の構造設計を行なうには形状決定解析が必須であることを論じ,そのための計算プログラムを開発した.これは既往の研究成果によって得られた解析法を拡張したものである.これによってこの構造系が形状決定問題に対して極めて敏感な特性を持つことを知った. 4. この構造系の実構造物への適用性を調べるため,ドーム状の設計モデルを想定して各種の検討を行なった.
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