研究概要 |
落石の寸法・密度,土砂斜面の勾配の沈下を考慮した落石の線運動定数およびエネルギー消費に及ぼす影響を定量的に解明することを目的とし,一連の室内実験を実施した。落石モデルは幅9.0cmの円柱で,寸法の影響を調査するために直径を7.5,10.0,12.5cmの3通りのものを,また密度の影響を調査するためにスチールおよびアルミニウム製を使用した。斜面構成材としては,湿潤状態の密詰め豊浦標準砂を使用した。15〜35degに斜面角度を変化させ,斜面長さ約230cmにて落石モデルを落下させる実験を実施した。その結果,以下に示す新しい知見が得られた。 1. 土砂斜面上を落下する落石の運動は,いずれも等加速度運動である。 2. 落石の斜面方向加速度,等価摩擦係数および速度残存係数(自由落下速度に対する落石の速度比)は,斜面勾配とともに直線的に増加する。斜面勾配に対する線運動定数の増加率は,落石の質量に関わらずほぼ等しい。 3. 落石の質量が大きくなるにつれて,沈下による運動抵抗が増加するために,加速度,速度残存係数は減少し,等価摩擦係数は増加する。 4. 制動時のスリップ率,回転運動と並進運動のエネルギーの比は,斜面勾配,落石の質量とともに減少する。 5. 落石の質量が大きくなるにつれて,位置エネルギーに対する並進運動,回転運動のエネルギーの割合はかなり減少し,位置エネルギーに対する土の締固めエネルギーの割合がかなり増加する。 当初,台車を使用し沈下量を正確に測定していたが,台車の落石モデルの線運動に及ぼす影響を無視できないことがわかった。沈下量を測定すること,およびシミューレーション解析法の開発が今後の課題である。
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