研究概要 |
本研究の目的は,ドライバーの運転時における視覚錯誤のメカニズムについて考察するものである.約70名のトラックドライバーを対象に道路勾配の認知に関するアンケート調査を行った.さらに,小人数ではあるが,運転時おけるドライバーの視覚環境の認知が運転行動に及ぼす影響を明らかにするため,アンケート調査と走行実験を行った. 以下に得られた知見を示す. 1)運転時,ドライバーの視野に入る交通密度(台/100m)とその密度に対する混雑度の認知との関係は対数の関係である.一方,走行速度(km/時)とその速度に対する認知との関係は線形の関係である. 2)交通混雑に対する認知と自車の走行速度に対する認知との関係は指数関数で示される.車間距離を大きく取って安全な運転をするドライバーは密度に関する認知より速度に関する認知を重視している.一方,車間距離の小さいドライバーは,認知の段階で速度に対する認知そのものが小さい者と,認知はしているが行動に結びついていない者がいる. 3)車間距離の取り方に影響を及ぼすものは,速度以外には被験者の個人差によるものが大きかった. 4)アンケート調査によると,車線変更をする際,どの情報にウェイトを置いているのかは,ドライバーによって異なる.調査結果をクラスター分析すると,車間距離情報にウェイトを置いているタイプ,速度差情報にウェイトを置いているタイプ,両者にウェイトを置いているタイプの3つに分類できる. 5)トラックドライバーの約3割が道路勾配の認知に対して誤った経験を持っている.その誤った経験をした道路は高速道路や一般道路と広範囲にわたっている. 今後は,誤った認知を避けるための具体的な方策を検討する予定である.
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