研究概要 |
本研究では、自然環境条件下にある土壌を採取し、土壌間隙水中及び土壌中の元素を分析し、鉛直分布を調査することにより、土壌中における元素挙動の解明を試みた。8年度は、京都大学原子炉実験所敷地内において、地表より80cmの深さまで土壌を11層に分けて採取した。土壌間隙水の水質の分析値より、陽オイン総量と陰イオン総量の当量比、水分比(含水比)さらに全水分に対する遠心抽出水分の割合(抽出率)を算出した。その結果、陽オインや陰イオンの総量濃度は、深さ15cm以深において深さ15cmより上部の濃度の4分の1程度に減少していること、陽オインのうち、特にKは、深さ15cmより上部と下部で1桁近く濃度が異なり、ついでCaが数倍の濃度差を示すこと、陰イオンでも同様の傾向があるが、特にNO_3^-が深さ15cmより上部と下部で1桁近く数値が異なる大きな濃度の変化を示すことを明らかにした。この原因としては、有機物の分解に起因するK,Ca,NO_3^-の溶出が考えられた。9年度は、米原市内の畑において、土壌採取地点を4カ所(A,B,C,D)選び、地表より約20cmの深さまで土壌を約4層に分けて採取した。土壌間隙水の水質の分析値より、畑土壌における間隙水の主要イオン態物質濃度は表面(0〜5cm)で高く深さ方向に減少している。B,C地点では陽・陰イオンバランスはほぼ保たれているが、A,D地点では誤差がかなり大きくなっている。A地点では、pHの測定値が示すように、間隙水質は弱アルカリ性であり、HCO_3^-やCO_3^<2->の項目が測定されていこと、畑土壌でありながら、間隙水のpHの最低値は4であった。間隙水が低pHを示すのに対応して、高濃度のA1が検出されており、低pHを示す一因として、高いA1濃度が関与していることが分かった。土壌中のイオン交換態微量物質濃度と間隙水中の微量物質濃度の比より、分配比(L/Kg)をCs(10^1〜10^3),Co(10^0〜10^2),Cr,Zn,Sb(10^0〜10^1)と評価した。得られた分配比は、従来の分配係数の報告値の範囲内にあり、安定元素を利用した野外表層土壌中における分配比の評価手法として妥当な方法を開発した。
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