研究概要 |
本研究の目的は,コンクリート充填鋼管部材をラーメン架構のブレース材とするときに早期に破断しないという要求を満たすブレース接合部を明らかにし,これを組み込んだラーメン架構の耐震性評価法を示すことである.平成8年度は各種接合部モデルの単調圧縮および単調引張実験を行った.実験変数は,接合形式(管通しガゼットプレート継手,十字形管通しガセットプレート継手,フランジ継手),ガセットプレートの割込長さ(3種類),鋼管の径厚比(20,30,50)である.実験結果より,中空鋼管に対して規定された割込長さを有すれば,いずれの接合形式でも継手効率85%以上となった.母材の変形能力は十字形管通しガセットプレート継手では完全に発揮されること,管通しガセットプレート継手ではやや低下するが実用上は十分である.平成8,9年度は,部材を門形ラーメン加力骨組に取り付け,繰り返し荷重を作用する実験を行った.ブレース試験体はすべて母材で破断し,接合部はいずれの形式でも繰り返し加力に対して十分な性能を有していることがわかった.なお,破断までの加力サイクル数は筆者らが提案した破断予測式で良好に予測することができた.さらに平成9年度にはK型コンクリート充填鋼管ブレース付き門形ラーメン架構2体の繰返し水平力載荷実験を行った.ただし、継手は管通しガセットプレート継手で,鋼管の径厚比は20と30の2種類がある。ブレース鋼管の径厚比が20の場合は,片方のブレース材のみに曲げ座屈変形が集中し,他方のブレースは弾性域に止まる非対称な塑性崩壊機構が形成された.残りは両ブレース材が曲げ座屈する対称な機構が形成された.対称モードが両ブレースのエネルギー吸収を期待できる点で望ましいが、非対称モードはコンクリート充填鋼管ブレースにのみ現れるもので,少なくとも片方のブレースのエネルギー吸収が期待できるので純鉄骨ブレースの場合よりも優っている.
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