研究概要 |
<第一部都心居住問題と地価>種々の都市問題を惹起する都心部の居住人口減少は住宅から業務商業への土地利用変化を伴う.人口回復には,従来の住宅供給政策に加えて,1992年の都市計画法・建築基準法改正で拡充された住宅系専用用途地域の適切な運用により住宅地を面的に確保することが必要である.一方で,収益還元法による地価関数によると,住宅系用途の専用化強化は地価下落をもたらすと推測されるので,土地所有者の損失に対して賃貸住宅建設費の補助や家賃上乗せ補助といった対処が必要となるだろう. <第二部用途地域制と地価>各種の土地特性を変数とする地価関数を推定し,土地利用規制が地価形成に及ぼす影響を定量的に評価した(ヘドニックアプローチ)結果,用途地域制の地価への影響が大きいのは用途が特定された第1種住居専用地域と商業地域であった.また,用途地域別推計では,容積率の影響が大きいのは商業地域,小さいのは第1種住居専用地域であり,住居地域は両者の中間的特徴をみせた.さらに,住居地域を都心部周辺と外周部に分けて推計したところ,都心部周辺では商業地域的な特徴をみせ,住居地域が住宅系用途から業務商業系用途への遷移地域的性格を有することが示された. <第三部土地利用遷移地域と地価>土地利用遷移は支配的な土地利用が共同住宅・併用住宅へ向かう弱遷移と業務商業系へ向かう強遷移に分解して捉えることができる.土地利用クラス(ストック)と弱遷移指標・強遷移指標(フロー)を用いて東京都区部の各町丁目を分類し,全体的な遷移化傾向と具体的な遷移地域の所在を明らかにした.また,土地利用遷移を変数とする地価関数の分析により,弱遷移よりも強遷移の方が地価への影響が大きいこと,弱遷移地域は同様の特性を持つ地域と比べて地価上昇が大きいことを明らかにした.
|