研究概要 |
兵庫県南部地震では約30万人が,学校,公民館,公園などに避難した。特に学校や公民館などの文教施設では,多くの避難者が長期の避難生活を送った。しかし文教施設は,震災時に対応する建築計画がされておらず,問題が多い。また震災後1週間は避難生活の支援ネットワークが築かれず,医療サービス・飲食品・寝具・衣料品などの供給が困難な状況にあった。そのために本来の機能を基礎にしながらも震災時には避難拠点として活用できる文教施設の新しい整備標準を策定する必要がある。 まず最も重要なことは建築構造の耐震化である。耐震設計が行われたはずの鉄筋コンクリート造校舎に構造被害が出ており,児童・生徒が在校中に地震が発生した場合の危険性は予想もつかない。第2次部材の地震被害(天井の落下など)も人命にかかわるケースがある。次に避難拠点として機能するためには電気・上水道設備の耐震性と雑用水の確保を欠かすことができない。また文教施設の立地条件にもとづく危険性もあり,埋立地にある学校では液状化現象によってグランドが破壊される例があり,避難拠点に適さない環境になる。一方,避難生活を支援する医療・給食・物資配給ネットワークの実態は,役所の管轄組織の違い,施設設置主体の違い,そして所属地域が市か県かでネットワークが異なり,排他的になって一元化が困難である。実効ある支援ネットワークの迅速な形成のためには,被害程度に応じて作動させる多段階アクション計画を提案する。その実行のためには被害程度をできるだけ早く正確に把握することが最大前提となる。
|